平成28年度上半期 活動報告(海外)

インド極貧農村児童支援事業

A, ブッタガヤ郊外の極貧農村の教育支援

ラフールナガール村にある小学校。
ラフールナガール村にある小学校。

 5月に支援地ラフールナガール村にコーディネーターが入り、調査して参りました。村では2年間にわたり、村内で特に貧しい家庭環境の子どもに奨学金を支給してきましたが、もらえない家庭から出てくる不満がより大きくなっているため、一時支給を中止しました。奨学金をもらえない家庭からは貧しさでは変わりないという主張と、平等の観点から、政府の支援のように全員に奨学金を支給すべきだという意見、また学校に行っていない家庭は奨学金支援の蚊帳の外におかれることへの不満が述べられました。支援しているラフ―ルナガール村はインドを見回しても特に貧しいところで、支援対象家庭にこの村のほとんどの家庭が当てはまるのですが、当団体の資金ではどうしても生徒全員への奨学金支給は不可能です。それに学校に行かせられない家庭に現金を支給しても、生活費に使われ、自立支援とは違ったものになってしまいます。貧しいからゆえ、現金支給の執着が強く、話し合ってもなかなか理解が得られませんでした。現金支給とは違った経済的支援と並行して根気よく子ども達への教育の必要性を説得する必要がありそうです。学校の施設整備、教育教材の確保、先生の質の向上への取り組みは今後も継続する予定です。

B. 縫製トレーニング事業

写真はムンバイの職業訓練の様子。
写真はムンバイの職業訓練の様子。

 昨年度から13~18歳程度の女子を対象とした縫製トレーニングを計画してきましたが、この5月からその事業がスタートしました。村在住で縫製の指導をしてくれる先生の名前はリタデビさん35歳16年間の縫製経験者、そしてルビデビさん40歳14年間の経験者の2人です。縫製トレーニングをする場合には、指導経験のある縫製学校の先生を雇用して、村に派遣するか、町の縫製学校に子どもを通わせるのが一般的な支援の形ですが、その方法を取ると、高額の費用がかかってしまいます。村内で縫製経験者を先生として雇用することで村内の先生(彼女たちの家庭も貧しい)の収入になるということと、彼女たちが教えるという技能を向上させる機会を得れることが出来ます。また、すでに2人の先生はミシンを所有し、教える場所も彼女たちの家でできるということを含めて、10分の1程度の費用でこのプロジェクトが行うことが出来ます。

縫製の先生リタデビさん。
縫製の先生リタデビさん。

 村内の縫製トレーニング希望者は10人です。先生はこの女の子たちに日曜日以外毎日午前10-12時まで2時間教える事にします。生徒達は学校に行っていない中学、高校生です。
 その年の女の子は家の家事育児や小作の手伝いをして暮らしていますから、通学と違い、親から文句を言われることなく、普段の仕事から自由になれると同時 に、自分に自信を付ける良い機会になるでしょう。トレーニングは5月から始め、3か月間で一旦トレーニングを終えます。そして技能がどの程度向上したかど うかを当団体が直接確認したうえで、その後の計画を立てようと考えています。

C, マンゴー植林による農村開発

 マンゴの苗木を村内に提供して育てるという計画は始めて3年目を迎えます。今までに約20家族に苗木を配布しましたが、育て続けている家庭は4件程度でした。村の小学校の校長先生は、この村の生産意欲は低いので、マンゴを育てられるわけがないと否定的でしたが、現実にはマンゴを育てる意欲がある家庭は少なからずいるという結果でした。そこで今年の5月にコーディネーターが村で全家庭にマンゴの苗木を配布する計画を始めました。
 方法は村内で唯一のマンゴの木で実ったマンゴの実を購入し、その実を子どもたちに渡して、実を食べさせて種を取り、日本から持ち込んだ300個の苗木用ポットに植え、信頼のおける村内の一軒の家庭に有償で育ててもらい、1年程度成長したマンゴの苗を希望する各家庭に配布するという方法です。
 縫製トレーニングと同様にマンゴ栽培もうまくいけば村内にお金が落ちる方法です。村人の意欲をかきたてつつ、経済的に自立する方向にもっていくのは現地の事情を沢山知る必要があります。定期的に通ってコミュニケーションを取ることで村人との信頼関係を築くことも大事です。失敗も多く、時間がかかる事業ですが、一つ一つ模索していきたいと考えています。

日本から用意した苗木用ポット。最初は均質な管理をしたいため、一軒の家にお願いした。
日本から用意した苗木用ポット。最初は均質な管理をしたいため、一軒の家にお願いした。
マンゴを食べに来た村の子ども達。
マンゴを食べに来た村の子ども達。

南アジアの人身売買から少女を救う事業

 前回の報告でインドのムンバイでの人身売買の現状とそこで活動する救援団体のお話をさせて頂き、インドの貧困の縮図がここにあるということをお伝えしました。5月にもコーディネーターが人身売買救出団体、レスキュー・ファンデーションを訪問し、団体が保護した少女から直接インタビューしたり、田舎に帰る少女とも同行するなど、団体の運営状況を視察して参りました。現在支援しているブッタガヤの極貧農村などから少女が人身売買の被害者になっているという現実の為、当団体では少女の救出活動にも力を入れたいということをお伝えしましたが、何事も費用が掛かる事です。現在年間100万円程度の寄付を頂いておりますが、この額では東日本大震災、熊本地震等の国内支援事業とインドの農村支援が精いっぱいです。
 そのために今年度は、人身売買から少女を救出する事業を始めることは出来ませんが、団体とコミュニケーションをとりつつ、支援のありかたを探り、今後もあきらめることなく広く全国寺院様方にお声を掛けさせて頂きます。
 是非、皆様の地区の仏教会や宗派の会等でこの事業に関心を寄せて頂き、ご協力いただけるようお願い申し上げます。

ムンバイ郊外にある保護施設。日本の外務省の援助で建てられたそう。人身売買の問題は政府間レベルでも深刻な問題として捉えられています。
ムンバイ郊外にある保護施設。日本の外務省の援助で建てられたそう。人身売買の問題は政府間レベルでも深刻な問題として捉えられています。
救出された女性達。保護施設で精神的ケア、職業訓練を受けて社会復帰の道を探ります。救出には団体の資金援助が入りやすいのですが、社会復帰にかかる費用にはなかなか寄付が集まらないのが現状のようです。
救出された女性達。保護施設で精神的ケア、職業訓練を受けて社会復帰の道を探ります。救出には団体の資金援助が入りやすいのですが、社会復帰にかかる費用にはなかなか寄付が集まらないのが現状のようです。